
薬師寺智子
筋委縮性側索硬化症(以下、ALS)という病気をご存じでしょうか。全ての運動神経が退行変性し、全身の筋肉が委縮して筋力が低下していき、最終的には呼吸筋も筋力低下し呼吸障害をおこす病気です。生存期間は初発症状が出現して3~5年と言われています。
●1日1日が貴重
Iさんは、2年前頃から体の動きが悪くなり、特に左手指先のしびれが少しずつ進行、動かなくなり病院に行きました。なかなか原因がわからず病院を転々とした末にALSと診断。そのとき余命は2年と言われたそうです。
今年2月、Iさんは療養目的でみさと協立病院に入院されました。病気の進行は思いのほか速く、日を追うごとにできることは少なくなってきました。このまま病気が進行すると、あと2、3ヵ月で致命的な呼吸不全になることが考えられます。しかし、Iさんは人工呼吸器で生きることを望んではいません。このまま自然に任せて、と決められました。
Iさんにとっての1日1日はとても貴重なものです。今日できていたことも明日はどうなるかわかりません。そんな思いで過ごす毎日とはどのようなものなのでしょうか。自由に動けるうちに、好きなことをして過ごしてほしい。外泊も何度かされましたし、映画を観に外出もされました。しかし、このごろは移動するだけの体力もなくなって、ベッドに横になっていることが多くなりました。以前は毎日のように行っていた病院の中庭にも行けなくなり、病院の中だけではなかなか気分転換になるようなことがありません。
●誕生日のお祝いをしよう!
6月はIさんの誕生日でした。そこでリハビリスタッフを中心に、病棟で行うレクリエーションの中でIさんの誕生日をお祝いしようと計画しました。
当日は、Iさんの体力を考慮し、会場などの準備がすべて整ってからお迎えに行きました。はじめに院長の挨拶、「千の風になって」の歌声、リハビリスタッフによるバイオリン演奏、キーボード演奏、ギターの伴奏で歌が次々に披露されました。普段病棟とは違った院長やリハビリスタッフの姿に、Iさんはとても感激されていました。痛くて不自由な身体を音楽にあわせてゆらしながら嬉しそうに聴かれていました。時折Iさんの目から涙がこぼれているのが見られ、見守っていた私たちスタッフも思わず目頭が熱くなりました。
●もっともっと思いを汲み取りたい
最後に病棟スタッフが用意したバースディケーキのろうそくに火をつけ吹き消してもらおうとしましたが、肺活量が少ないIさんは一人でろうそくの火を吹き消すことができません。主治医に協力してもらい一緒に火を消していただきました。誕生日を一緒に祝っていただいた患者さんたちとケーキも食べていただきました。久しぶりのケーキはとても喜んでいただけたようです。Iさんは不自由な体で何度もお辞儀をされていました。
Iさんの病状はこれからも進んでいき、寝たきりになることも時間の問題です。いろいろな葛藤があるでしょうが、それをストレートにスタッフにぶつけることはあまりありません。自分でできることは自分でやろうとする意欲もみられます。私たちは、Iさんが1日1日を大切に過ごしていただけるよう、もっともっと思いを汲み取り声をかけ、やりたいこと、望むことをサポートしていけるように関わっていきたいと思っています。
Iさんは、2年前頃から体の動きが悪くなり、特に左手指先のしびれが少しずつ進行、動かなくなり病院に行きました。なかなか原因がわからず病院を転々とした末にALSと診断。そのとき余命は2年と言われたそうです。
今年2月、Iさんは療養目的でみさと協立病院に入院されました。病気の進行は思いのほか速く、日を追うごとにできることは少なくなってきました。このまま病気が進行すると、あと2、3ヵ月で致命的な呼吸不全になることが考えられます。しかし、Iさんは人工呼吸器で生きることを望んではいません。このまま自然に任せて、と決められました。
Iさんにとっての1日1日はとても貴重なものです。今日できていたことも明日はどうなるかわかりません。そんな思いで過ごす毎日とはどのようなものなのでしょうか。自由に動けるうちに、好きなことをして過ごしてほしい。外泊も何度かされましたし、映画を観に外出もされました。しかし、このごろは移動するだけの体力もなくなって、ベッドに横になっていることが多くなりました。以前は毎日のように行っていた病院の中庭にも行けなくなり、病院の中だけではなかなか気分転換になるようなことがありません。
●誕生日のお祝いをしよう!
6月はIさんの誕生日でした。そこでリハビリスタッフを中心に、病棟で行うレクリエーションの中でIさんの誕生日をお祝いしようと計画しました。
当日は、Iさんの体力を考慮し、会場などの準備がすべて整ってからお迎えに行きました。はじめに院長の挨拶、「千の風になって」の歌声、リハビリスタッフによるバイオリン演奏、キーボード演奏、ギターの伴奏で歌が次々に披露されました。普段病棟とは違った院長やリハビリスタッフの姿に、Iさんはとても感激されていました。痛くて不自由な身体を音楽にあわせてゆらしながら嬉しそうに聴かれていました。時折Iさんの目から涙がこぼれているのが見られ、見守っていた私たちスタッフも思わず目頭が熱くなりました。
●もっともっと思いを汲み取りたい
最後に病棟スタッフが用意したバースディケーキのろうそくに火をつけ吹き消してもらおうとしましたが、肺活量が少ないIさんは一人でろうそくの火を吹き消すことができません。主治医に協力してもらい一緒に火を消していただきました。誕生日を一緒に祝っていただいた患者さんたちとケーキも食べていただきました。久しぶりのケーキはとても喜んでいただけたようです。Iさんは不自由な体で何度もお辞儀をされていました。
Iさんの病状はこれからも進んでいき、寝たきりになることも時間の問題です。いろいろな葛藤があるでしょうが、それをストレートにスタッフにぶつけることはあまりありません。自分でできることは自分でやろうとする意欲もみられます。私たちは、Iさんが1日1日を大切に過ごしていただけるよう、もっともっと思いを汲み取り声をかけ、やりたいこと、望むことをサポートしていけるように関わっていきたいと思っています。