東葛病院 総看護師長 内野 陵子
東葛病院は昨年7月に回復期リハビリ病棟をオープンしました。急性期一般病棟での治療を終えた方のリハビリに力を入れ、家庭や施設へ戻るために支援する病棟です。32床の病棟ですが、日々満床状態です。
今回、Aさんとのかかわりで、納得のいく生活リズムの尊重がいかに大切かを学ぶことができた報告がありました。
●昼夜逆転し、暴力行為も
80代のAさんは妻と死別後、娘さんご夫婦と暮らしていました。昨年の7月にトイレで意識をなくし痙攣を起こしているところを家族に発見され、救急車で当院へ運ばれました。即入院し治療が開始されましたが、すぐには病状回復がみられず、意識混濁の中、各種のカテーテルを抜いてしまったり、職員に暴力行為を行ってしまい、やむなく家族の方に付き添ってもらったり、安全のために抑制を行ったりしました。
1ヵ月後回復期リハビリ病棟に移られましたが、昼夜逆転状態。夜間覚醒し何かを探すような姿が見られました。また突然、洋服を脱ぎ始め全裸になって歩き出そうとする行為がみられました。これらの行動を止めようとすると興奮し、職員の顔や体を乱暴に殴る行為がみられました。
●全裸になるのは入浴のサイン?!
娘さんは、Aさんの姿を見て、「入院してから変わった。今までできていたことができなくなってしまって......」「このままでは家で看られない、今の仕事もやめないといけない」と精神的にショックを受け、在宅に帰ることにも大きな不安を抱いておられました。
チームで論議し、Aさんの日常生活や生活リズムを聞いてみようということになり、娘さんに聞いてみました。「自宅では17時になると自分でお湯を沸かし、毎日お風呂に入っていました。大のお風呂好きなんです」とのことでした。全裸になる行動は入浴のサインだったのです。それからはAさんの日常生活にあわせた時間で入浴介助を行いました。Aさんは入浴すると湯船にゆっくりつかり、満足した表情でした。昼夜逆転も眠剤の量を減らし様子をみました。
音楽好きとの情報から、ウォークマンとジャズのCDを聴いて過ごしていただきました。「昔はこれでダンスを踊っていたんだ」とか、ピアノコンサートの行事に参加されたときには「涙が出るほどよかった」と喜んで話してくださいました。暴力行為もめっきり少なくなり、表情も穏やかになって笑顔で答えてくれるようになりました。
●自分らしい生活を取り戻した
退院後は娘さんと一緒に元気な姿を見せてくださいました。娘さんから「今は家で一人留守番をしてくれています。デイサービスの日も覚えていて『行くよ』と言い、絵の指導もしているんです。朝一番に起きて『ご飯』と言って私を起こしてくれます。病棟の皆さんに背中を押してもらって本当によかった」と笑顔で報告してくださいました。
私たちは、日々業務に追われていますが、患者さんや家族の方との共通の喜びが私たちのエネルギーだと感じさせてくれるAさんでした。
80代のAさんは妻と死別後、娘さんご夫婦と暮らしていました。昨年の7月にトイレで意識をなくし痙攣を起こしているところを家族に発見され、救急車で当院へ運ばれました。即入院し治療が開始されましたが、すぐには病状回復がみられず、意識混濁の中、各種のカテーテルを抜いてしまったり、職員に暴力行為を行ってしまい、やむなく家族の方に付き添ってもらったり、安全のために抑制を行ったりしました。
1ヵ月後回復期リハビリ病棟に移られましたが、昼夜逆転状態。夜間覚醒し何かを探すような姿が見られました。また突然、洋服を脱ぎ始め全裸になって歩き出そうとする行為がみられました。これらの行動を止めようとすると興奮し、職員の顔や体を乱暴に殴る行為がみられました。
●全裸になるのは入浴のサイン?!
娘さんは、Aさんの姿を見て、「入院してから変わった。今までできていたことができなくなってしまって......」「このままでは家で看られない、今の仕事もやめないといけない」と精神的にショックを受け、在宅に帰ることにも大きな不安を抱いておられました。
チームで論議し、Aさんの日常生活や生活リズムを聞いてみようということになり、娘さんに聞いてみました。「自宅では17時になると自分でお湯を沸かし、毎日お風呂に入っていました。大のお風呂好きなんです」とのことでした。全裸になる行動は入浴のサインだったのです。それからはAさんの日常生活にあわせた時間で入浴介助を行いました。Aさんは入浴すると湯船にゆっくりつかり、満足した表情でした。昼夜逆転も眠剤の量を減らし様子をみました。
音楽好きとの情報から、ウォークマンとジャズのCDを聴いて過ごしていただきました。「昔はこれでダンスを踊っていたんだ」とか、ピアノコンサートの行事に参加されたときには「涙が出るほどよかった」と喜んで話してくださいました。暴力行為もめっきり少なくなり、表情も穏やかになって笑顔で答えてくれるようになりました。
●自分らしい生活を取り戻した
退院後は娘さんと一緒に元気な姿を見せてくださいました。娘さんから「今は家で一人留守番をしてくれています。デイサービスの日も覚えていて『行くよ』と言い、絵の指導もしているんです。朝一番に起きて『ご飯』と言って私を起こしてくれます。病棟の皆さんに背中を押してもらって本当によかった」と笑顔で報告してくださいました。
私たちは、日々業務に追われていますが、患者さんや家族の方との共通の喜びが私たちのエネルギーだと感じさせてくれるAさんでした。