訪問看護の始まりは様々です。緊急の依頼で、状況をつかみながら訪問を始めることもあります。今年の夏は猛暑が続き、暑さで食欲が低下し食事や水分が不十分で、動けなくなってしまった方の依頼が相次ぎました。
●ショートステイ中に高熱が出たOさん
Oさんは90歳、家は専業農家です。一人娘の家族が全員で農業を営んでいます。右の不全麻痺があり、家では寝ていることの多いOさんは、月の半分以上をショートステイやデイサービスに出かけています。
ショートステイ中に高熱が出て、家に戻ってきました。かかりつけ医のT先生が往診で抗生剤入りの点滴を開始。当日、T先生から電話があり、「明日朝一番で、病状観察をして報告をしてほしい。その結果で点滴を考える」ということでした。介護保険サービスを使っているならケアマネがいるはず。ケアマネから情報を得るとともに、主治医から訪問看護の指示が出たことを伝えて提供表を作ってもらいます。
翌日は朝9時に訪問。Oさんはまだ熱があり、呼吸状態などをT先生に報告の結果、点滴をすることになりました。2回目の訪問は別の看護師が行く予定です。T医院に行って、点滴用の材料を受け取ることなど携帯で連絡し合って訪問です。
Oさんは点滴のことが理解できず、昨日は大人が3人がかりで開始したそうです。今日は二人しかいないけれど大丈夫かな。針が触れた途端にものすごい力です。「おじいちゃん我慢してね」娘さんの力を借りて何とか開始。2回目の点滴の後は元気になって、娘さんが家を空けた間に、庭で転倒してしまいました。とにかく元気になってよかったと、その後は内服薬になりました。訪問は月1回になりました。
●往診の現場からの依頼
Iさんは80歳の女性です。パーキンソン病とうつ病があり、大学病院に通院していました。
働いている娘さんと二人暮らしです。昼間は独居になるのでヘルパーさんが2時間ごとに訪問して、トイレ歩行、食事・水分摂取の介助をしていましたが、急に食べられなくなり歩くこともできなくなりました。
S先生からの依頼は、往診の現場からでした。今行っている点滴の終了と明日の点滴の依頼でした。今日からということで、点滴終了までの間にS先生のクリニックに、指示書の依頼と明日の点滴の必要物品を受け取りに行きます。
状況は簡単ではありませんでした。点滴はヘルパーさんが来ている間に針を刺しに行って、次のヘルパーさんが来たときに針を抜きに行ってくださいということでしたが、一人でいるときに何があるかわからないので、入院を勧めたほうがよいのではないかとS先生に提案しました。しかし娘さんは入院はさせたくないと、半日の休みを取ることになり、2日目は午後の訪問の予定でしたが、検査結果から入院治療が必要との判断で救急搬送となりました。
●緊急依頼にも応じられるステーションでありたい
急に食べれなくなったり、動けなくなってしまったときに、まずはかかりつけの先生に診てもらって相談できることはとても安心です。これまで地域の先生方とは、様々な患者さんを通じて連携してきました。病状の変化に対して、主治医への連絡、報告、指示受けにより速やかに対応すること、自宅療養している方の「家にいたい」と、「必要な時にはすぐに入院させたい」という家族の思いを受け止めて、訪問看護師が主治医に患者や家族の思いを伝える役割をしてきました。
訪問看護は、少人数の職場のためスタッフにも訪問時間にも余裕がないのが現実ですが、家で療養したい、一緒に家で暮らしたい気持ちに応えられるように、緊急依頼にもいつでも応じられるようなステーションでありたいと考えています。