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第65回 地域で孤立していたAさん、回復期リハ病棟で元気回復

みさと協立病院 3南病棟師長 小野由美子

 今年の夏は、異常な猛暑の影響による熱中症で病院に運ばれたり、在宅死される高齢者があとをたたず、胸を痛めました。みさと協立病院にも地域の高齢者が何人か熱中症で入院しました。


3南病棟の敬老会で

●熱中症後廃用症候群で入院

 今回ご紹介するAさん(70代)も、熱中症後廃用症候群で入院中の患者さんです。

 30代の次女と二人暮らし。6月ごろより近隣住民から地域包括支援センターへ「家がごみ屋敷で荒れ放題。親子が住んでいるはずだが、亡くなっているのでは?」と相談が入っていました。

 センターのスタッフが7、8月と訪問すると、娘さんが玄関で対応。Aさんの生存は確認できましたが、入室は拒否されました。悪臭がすさまじく、生活状況は劣悪だったそうです。次女は精神疾患がありそうな様子で、Aさんへの虐待や介護放棄も疑われ、9月初旬に別居の長男立会いのもとで、市の担当者、警察が強制介入しました。猛暑の中、親子とも長袖を3枚重ね着し、マフラーを巻いて過ごしていました。

 次女はB病院に医療保護入院となりました。Aさんは他院を受診しました。栄養状態が悪く、ふらつきはあるものの、検査データ上は大きな問題がなく、補液実施のみで帰宅という指示でした。しかし、とても一人で家に帰せる状況ではない、と市の担当者から当院に相談があり、栄養状態の改善とリハビリ目的で入院となりました。


●笑顔がみられるようになった!

 入院時は表情が硬く、不安げな様子でした。会話は小声で聞き取りにくく、著しくやせていて、ふらつきが強く、車椅子を使うことにしました。髪や爪も伸び放題で、体臭が強く、オムツ使用でした。

 入院後は食事を全部食べることができるようになりました。入浴をし、爪を切り、散髪も行い、さっぱりしました。リハビリもすすみ、排泄はポータブルトイレを使って自立。今、歩行訓練を行っています。表情が明るくなり、笑顔がみられるようになりました。他の患者さんと会話もするようにもなりました。


●ようやく入所先が決まった

 今回のように警察介入までした虐待ケース(娘さんの病状と考えられるが)は、市では初めてのケースのようです。緊急措置できる市内の設備は整備されておらず、Aさんのような状況の人が緊急で入れるところはありません。「今後のAさんの生活の場を行政の責任で確保してほしい」と話し合いを進めてきました。なかなか見通しが立ちませんでしたが、10月末に近くの市にある有料施設に入所が決まり、退院予定となりました。

 高齢者虐待、介護疲れによるさまざまな事件が起こっている現在。さらにアンテナを高くし、患者さん一人ひとりの生活背景に目を向けて看護していきたいと思っています。

看護NOW