当病棟は2008年11月の病棟再編により、糖尿病・腎臓病・泌尿器・整形外科の混合病棟となった。再編当初はスタッフの半数が入れ替わったため非常に混乱をきたし、毎日が新しいことの連続だった。紆余曲折がありながらも地道に看護活動をしていく中で、当病棟としての役割が見えるまでになってきた。

Aさん(50歳代、男性)は、入院している母親の面会に行く途中で転倒し、右大腿骨転子部骨折で他院入院となった。糖尿病・糖尿病性腎不全(治療中断歴あり)・糖尿病性網膜症などの既往歴があり、腎機能悪化により透析導入を検討しながらの手術になるため、当院へ転院となった。
入院時の検査では、すぐにでも透析導入が必要なほど腎機能が悪化していた。そのため使用できる痛み止めが制限され、痛みのコントロールもうまくできない状況だった。それでもAさんは、友人から聞いた透析についてのマイナスイメージが強く、透析導入には拒否的だった。痛みがあって非常に苦しがり、訴えも頻回だったが、透析導入を勧める看護師へは率直な思いを表せず、互いの思いがすれ違う状態が続いた。
●変化へ
そこで、まずは、本人の辛さをしっかり受け止めることから始めようと意思統一をし、共感的に接するように関わりを変えていった。痛みのコントロールが十分に行えないことに大きな変化はなかったが、Aさんは辛さや困っていることなどの思いを少しずつ表せるようになっていった。
共感的な関わりとともに、医師にも協力してもらい、透析を導入することで、薬の使用が可能になり、今より痛みのコントロールができ、手術が可能になることなど、透析のメリットが具体的にイメージできるように説明をしていった。説明を繰り返していく中で、少しずつではあるが、マイナスイメージが変化し始め、透析導入に踏み出すことができ、そのことにより手術が無事終了した。

●安心して透析療法を続けるために
しかし、今後は透析療法をやめる訳には行かず、継続することが大きな課題となった。Aさんとの話から、糖尿病の治療を中断した理由が失業したことであると聞き、医療相談員と連携をとり、透析治療中の方は身体障害者手帳を取得できること、仕事へ復帰できるまでの間は生活保護の制度を使うなど、調整を行い、安心して退院の日を迎えることができた。元々都内在住であり、母親の面会に行く途中での受傷であったが、退院後も当院を信頼され、現在も都内から週3回通院中である。
●これからも......
病棟再編前は透析についてほとんど経験がなく、医師任せにしていることが多かった。この2年間さまざまな葛藤もあったが、スタッフ一人ひとりが確実に成長を続けているのを実感している。これからもぶれることなく、患者さん中心の看護を追求していきたい。