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あんパン大好き、Mさん やすらかに

代々木病院副総看護師長 訪問診療部担当 山本登美子


代々木病院で新たに在宅診療部担当となった山本副総看護師長

 代々木病院が外苑診療所から訪問診療を引き継ぎ、早4ヶ月が過ぎた。


 Mさんは104歳。訪問診療に伺っても、いつも静かにベッドに寝ていらっしゃる。3月の東日本大震災の時には、世話をしている娘さんも外出していて誰もそばにいなかった。1人悠然と寝ていらっしゃったと、心配して駆けつけたお婿さんの話。


 Mさんは時々熱を出した。臨時の往診に伺って点滴をしたことも何回もある。そのたび娘さんは、「いつ逝ってもいいけどやすらかであってほしい。覚悟はできている」といわれる。しかし、そのうちに、元気になって「あんパン食べたの」ということになる。あんパンと言っても普通の大きさではない。赤ちゃんの顔ほどもある大きなあんパンである。担当の医師も私たち看護師も、「おいしかった?」と笑って喜んでいた。あんパンを食べられるかどうかがMさんの健康バロメーターである。


 8月22日、この日も定期の訪問診療。最近はあんパンを口にしなくなっていた。「もうすぐ105歳の誕生日、それまで元気でいてね」みんなが願っていた。24日、朝7時、娘さんから「亡くなった」と連絡が入る。今日は丁度担当医師の往診日、看取られたかったかのような安らかな穏やかな死であった。


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