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第77回 最後まで痛みに苦しんだAさんと、共に歩んで

代々木病院 5階病棟 村井麻衣子

 代々木病院障害者病棟は、現在、脳梗塞後遺症・骨折後のリハビリ・維持透析でなおかつリハビリが必要な患者さんが入院されています。


●さまざまな合併症と闘うAさん

 37年間の透析歴でさまざまな合併症と闘ってきたAさん、破壊性脊柱管狭窄症に伴う硬膜外アミロイド沈着除去の手術を繰り返し、日常生活はベッド上、移動はストレッチャーという状態でした。痛みが強くリハビリは困難、痛みのコントロールにとても難渋しました。思いがけない形でAさんは亡くなりました。つらかったこともありましたが、丁寧に関わって、学びも大きく、「看護」という面においては本当にやりがいがありました。


●どうすれば痛みが緩和できる?

 疼痛対策は、麻薬の貼付剤から始まり、5~6種類の薬剤の中から、変更したり、併用したりしながらもAさんの痛みの軽減ははかれず、表情はいつも不安や苦痛に満ちていました。夜間は特にナースコールの回数も頻繁で、薬剤使用以外に温罨法(おんあんぽう)や、マッサージをしましたが、効果は一時的でした。

 1週間に1回程度カンファレンスが行われ薬効の評価をし、麻酔科にも相談、看護間でも統一したケアができるように意思統一するなど、私たちができることは精一杯やってきました。薬剤への依存を増強させず、痛みの緩和をしていく難しさを感じました。Aさんが入院されて約4ヵ月が経過、少し痛みが軽減し、今後も長期的な入院療養が必要なため、他院へ転院されました。


●「こんなに丁寧にやってもらえて安心です」

 その後、法人内2ヵ所の病院を経て、再び5ヵ月後、当院に転院されてきました。転院された当初は相変わらず痛みを訴えられ、仙骨部・両踵部に褥創が形成されていました。4月に入り、表情が少しずつ穏やかになり、ウトウトしていることが増えてきました。この間に奥様も大病を患い、面会もままならない状況で、「立っているのが辛くて...」と、椅子に座って声をかけるのがやっとの状況でした。しかし、「こんなに丁寧にやってもらえて安心です」と、笑顔をみせてくださいました。

 以前からの慣れているスタッフが、Aさんの名前を呼びながら関わったことが安心に繋がったのか...。仙骨部の褥創に関しては、切開術が行われました。日に3~4回の洗浄・処置、高カロリー輸液、経口からは栄養ドリンクを日に6パック(1200キロカロリー)、介助で補給していただき、限られたスタッフの体制ながらも最大限できるケアを行いました。


●日記がちょうど1冊終わって...

 やがて褥創のサイズは半分以下となり、完全な治癒まで目前と喜び合っていたところ、7月中旬、早朝静かに眠るように亡くなっているのが発見されました。ご家族もノートに日記を書いて状況を共有していたのですが、娘さんは、「ちょうど1冊終わったところで亡くなったんだね」と話していました。また奥さんも、「ここに帰ってこられて、みてもらえてよかった」と言ってくださり、お見送りの際は、何度もご挨拶いただき、私たちスタッフも気持ちが救われました。あらためて、Aさん、ご家族さまにお礼申し上げます。

看護NOW