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第78回 機能回復につながった生活支援

東葛病院 介護福祉士 遠藤 みゆき/川﨑 奈緒子

 代々木病院障害者病棟は、現在、脳梗塞後遺症・骨折後のリハビリ・維持透析でなおかつリハビリが必要な患者さんが入院されています。


 Aさん(90代、女性)は新潟県で一人暮らしを続けていましたが、認知症になったことをきっかけに、千葉県流山市に住む長男夫婦と同居しました。脳梗塞、高次脳機能障害で東葛病院に入院となりました。

●入院時のAさんは

 Aさんの状態は、以下のようでした。

・起き上がり全介助、移乗2人重介助。

・車椅子乗車は、ポジショニングを行い可能。長時間の乗車は、左側への傾きが強くなるため、車椅子専用のテーブルを使用。

・食事:1品ずつ提供し、見守り・一部介助。環境設定が必要。

・障害により、コミュニケーションが取りにくい。

 問題点としては、集中して食事がとれない、座位・立位のバランスが不安定、常に失禁状態、活動性の低下、があげられました。

●一つひとつ支援

 Aさんの機能回復のために、私たちスタッフは一つひとつ支援していきました。

〈食事について〉

 障害のために右側の人の動きや音に反応しやすく、食事に集中できないため、食事席を右付けとしました。また、他の患者さんの食事に手を伸ばすこともあったため、安全な環境で食事がとれるよう時間を調整しました。その後も定期的に、食事摂取環境・状況・量・時間など言語聴覚士とともに評価を行いました。

 約1ヵ月後、意識障害の改善に伴い、徐々に食事に集中でき、自力で摂取できる量が増えていきました。

〈座位について〉

 セラピストの助言のもと車椅子乗車時にはタオルやクッションで姿勢を整え、足底を床に下ろし、シーティングを使用しました。姿勢の崩れた時には、座り直しを行いました。

 車椅子への移乗は、協力が得られずバランスも不安定でしたので、2人介助スライド移動で統一しました。

〈日中の排泄について〉

 時間誘導を実施し、誘導時間を評価。排泄の認知を促すために、声かけとともにウォシュレットによる刺激や腹部マッサージを継続しました。

 さらに、離床時間に楽しみを持てるよう工夫し、また、身体状況に合わせた1日のスケジュールを作成しました。日中の覚醒状況などを記録し、離床時間を長くしていきました。

●これからも、介護士として

 食事の摂取がきちんとできるとともに1日の生活リズムが整い、離床する機会が増えていきました。離床が進むことで、筋力がつき、座位のバランスも改善。安定した座位姿勢が保てるようになり、意識障害も改善し、車椅子への移乗は1人介助となりました。このことにより、車椅子に座っている時間や回数が増え、他の患者さんとの交流が持てるようになりました。笑顔が多くなり、Aさんらしい新潟なまりの会話が増えました。排泄では、日中の失禁が減り、排尿・排便ともにトイレでの排泄が増えていきました。

 「生活支援とは、人間らしく生きることの支援である」と定義がされています。今回の事例では、生活支援の重要性について改めて考えさせられただけでなく、Aさんらしく生きることを支援できたという確信につながりました。

 今後も、介護士として、根拠を持った生活援助をするため、一つひとつ基本を振り返りながら、患者さんの願いや要求を実現できるようにしていきたいと思います。

看護NOW