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第80回 歩み始めた精神リエゾンチーム

みさと協立病院 副総師長 中村 君子

 みさと協立病院は2009年に、内科を障害者病棟、療養病棟、回復期リハビリ病棟の3つに転換しました。超高齢化社会となった今、当院にも認知症の他に深刻な精神的諸問題を抱えた患者が増えてきています。内科の医療スタッフが精神的な問題のアセスメントや対応の仕方に悩むことが多くなっており、そのことがストレスを増加させて疲弊状態を生み、やさしい看護・介護ができない、接し方がわからない、精神症状のある患者の入院は控えてほしいなど苦情となって寄せられていました。


●「リエゾンがあると心強い!」

 当初から内科・精神科を併設する病院の利点を活かした連携ができないかと感じていたときに、高次脳機能障害のAさん(60歳代、脳出血後)が回復期リハビリ病棟に入院して来られました。Aさんは、妄想による不穏、暴言、多動、強い帰宅欲求など変化の激しい精神症状があり、病棟スタッフは朝から夜中まで症状に振り回され、対応に困難をきたしていました。

 リエゾン担当の精神科医が、日に幾度も病棟を訪れ、薬剤調整を行ったり、対応の仕方についてスタッフと話し合いを重ねたりした結果、徐々に精神的に安定してきました。リエゾンとは他科と精神科の技術連携であり、連携するためのコミュニケーションはスタッフを支え安定させ、適切な対応が可能となり患者の回復につながるということを実感しました。病棟師長が「リエゾンがあると心強い!」といった言葉に、病院の方針である「からだと心の総合診療」の具体的なイメージが重なりました。

リエゾンチームのカンファレンス
●患者さんにこんな変化が...

 この経験を糧にして、「リエゾンチーム」への期待が高まり、「とりあえずやってみましょう!」という矢花副院長の声かけでスタートを切りました。毎週火曜日の午前11時30分、回復期リハビリ病棟に精神科医、薬剤師、精神科病棟ナース、担当セラピスト、時には臨床心理士、PSWなどが集合します。相談事例を持ち寄り、「夜は眠れているか」「食欲は?」「対応に困っていることは?」など状態を共有し、薬剤の効果や方針、関わり方の工夫などについて、それぞれ専門的視点から意見を出し合います。

 昨年7月より開始して、のべ73件のケースについてカンファレンスを行ってきました。薬剤の評価を行うことで患者さんのリハビリが進みADLが拡大する、やれることが増えると表情が豊かになる、関わり方の工夫で患者さんが穏やかになり、その人らしさを取り戻しているなどの効果がみられています。定期開催のため、方針や評価が明確になるのも良いという声も聞きます。

●自信をもって患者さんと向き合える

 さらに、多職種が協働していくことで、職種間の連携も良くなり、今まで点であった関わりが線になり、面へと拡がっていき、個々の負担が軽くなり、スタッフの力量が高まる、そして何より、一人ひとりが「安心」を得て、自信をもって患者さんと向き合えると実感できています。

 患者さんに出会うとき、身体と心は一体であり総合的な看かたができるように、専門職が意見交換を行い、お互いの専門性を高め合うことがより求められていると感じました。

 厳しい医師体制のなか、今後どのように継続していくか課題も多いのですが、協力し合い、さらに発展させていきたいと考えています。

看護NOW