戸山訪問看護ステーションは、新宿の韓流で賑わうJR新大久保駅から徒歩10分のところにあります。が、退勤のときには観光客で溢れかえって、駅までとても10分では辿り着けません。

近所には箱根山と名のついた、標高44.6mの山手線内で一番高い山があり、その周りには桜の木がたくさん植えられていて、ここが新宿か?と思うほど、春は見応えがあります。また数年前、新聞でも取り沙汰された「限界集落」と呼ばれる戸山ハイツと戸山団地が近隣にあり、独居・老老夫婦、生活保護世帯が多く住む地域となっています。
私は、2004年戸山に配属され、2年後所長に就任。介護保険制度の改定に振り回されながら、利用者様に寄り添い奮闘してきました。途中産休・出産、復帰をしても、利用者様に応援していただき、頑張ってくることができました。また、スタッフとも出会いと別れがたくさんありました。病欠から仕事復帰できなかったり、家族の介護で仕事を辞めた人、定年退職を迎えた人。いろんなスタッフに支えられて、今の戸山があるのだと痛感しています。そして今、常勤4人、理学療法士2人、言語聴覚士1人、事務スタッフ1人とともにこの地域を守っています。
●延命処置を望まず、眠るように...
1階には、おおくぼ戸山診療所、近所につくし薬局、在宅支援相談室新宿、ふれあい戸山があり、歓送迎会や忘年会など一緒になって集まって宴会することもあります。こういう事業所集団は珍しいよと言われることもありますが、新宿はこれが当たり前になっています。いつでも相談しあえて、気の合う仲間達です。
戸山の利用者様で最高齢の方が、今年の5月に亡くなりました。106歳でした。最期のその時まで、口から食事を摂ることができていました。点滴等の延命処置を望まず、眠るような最期でした。大好きな往診の先生が2ヵ月不在だったため、帰ってこられるまでは何とか生きていてほしいと、ご家族も頑張ってこられました。そして2ヵ月後亡くなられました。
また、ある利用者様は、大好きなお相撲を見て、翌日のデイサービスの予定を確認するなど、いつもと変わらない時間を過ごしていましたが、数時間後眠るように息を引き取られました。
●その人らしい最期を迎えるその人らしい最期を迎えることができたのも、ご家族のそれまでの努力と覚悟があってこそだと思います。今までの療養生活をやりきってきたことで、無駄に延命処置をすることなく自然に任せることができたのだと思います。訪問看護師をしていて、利用者様、ご家族の不安を解消し、裏方として支え続けることができてよかったと思える瞬間でした。
病院ではなく、大好きな自宅で最期まで療養できるよう一緒に悩み、工夫しながら、これからもスタッフ一丸となってサポートしていきたいと思います。