訪問看護ステーション早稲田 所長 坪野恵子
訪問看護ステーション早稲田は、みさと協立病院の近くにあり、また、この埼玉県南東部の地域には、精神科専門の病院がたくさんあります。したがって、精神科からの依頼が多く、利用者の7~8割が精神障害を持った方です。
●安定した生活が送れるよう支援して
今年2月1日から「精神科訪問看護基本療養費」の算定を届け出ました。当ステーションには精神科病棟を経験したスタッフが配置され、人間関係が取りづらい利用者さんが多いため、信頼関係を築くために時間をかけて関わっています。
利用者さんの多くは統合失調症の方です。生活上の困り事や症状の訴えを傾聴し、少し でも症状が軽減できるようにアドバイスをしています。病状の変化で薬を飲まなかったり、また、大量服薬をする方がいるため、訪問時は内服確認が、大事な援 助です。必ず内服の必要性の説明や使用方法を指導しています。定期的な通院ができなくなったり、臨時で通院が必要になった時には、病院への送り出しや通院 同行もします。様々な症状を持つ利用者さんと向き合い、安定した生活が送れるよう支援しています。
Aさんは、外出することの恐怖と不安が強く、特にバスに乗ると吐き気や緊張が高まり、パニック症状を起こしてしまいます。そのため、一緒にバスに乗り、気分を和らげるように支援しながら練習を繰り返しています。
●「子どもと暮らしたい」を支える
Bさんは、2年前から訪問を開始した30歳代の女性で、独り暮らしで自宅療養をして いました。彼女は、児童相談所に預けた小学生の子どもを引き取りたいという強い気持ちをもっていました。しかし、自宅には物が散乱し、食事作りもまともに はできない状況でした。母として子どもと暮らしたいという願いを応援するために、子どもの外泊訓練を行いました。生活能力や本人の病状が安定しているか確 認をしながら、主治医、市役所、児童相談所とカンファレンスをして、1年程前に子どもを引き取ることができました。
子どもと一緒に暮らすことで、子どものペースに合わせた食事作りなどの家事を、不十 分ながらも努力する姿がみられるようになりました。しかし、子どもが、万引きや母親の財布からお金を盗むなどの問題行動を起こすようになり、学校内でもい じめられ、これらのことから、学校を休みがちになりました。
●地域で支える大切さを実感
そこで、学校を含めて市役所、病院、児童相談所、訪問看護ステーションの担当者で、 会議を持ち、それぞれが関係した際の状況を報告して対応・援助を始めました。学校は家庭訪問を繰り返して子どもを支えています。学校が主催する担当者会議 もあります。それぞれの部署で担当者が関わり、連携し、この親子が安定して生活ができるように援助し、関わりを深めています。
担当者会議は福祉課のケースワーカーが招集することもあります。不定期に臨機応変に対応することで、支えています。
私たちはこの親子のケースから、地域との関わりの大切さを学び、地域で支えることを実感する精神科訪問看護を行っています。