柏豊四季訪問看護ステーション 山崎由美子
Aさんは70歳代の男性、もうすぐ70になる妻と、やはり高齢の猫と、古い団地に暮らしています。6年前にバスとの接触事故による脊髄損傷となり、寝たきりで全介助状態。神経損傷による左上肢、両下肢の麻痺、神経因性膀胱、糖尿病があります。妻の話では、退院時、リハビリ専門病院からの退院調整が難航しました。往診は柏市内で断られ松戸の診療所から、通所は管があるからと、近くでは受けるところが見つからず、遠方の小規模多機能サービス事業所でケアマネと介護サービスを利用しています。

●安定しない自宅療養
私たちは4年前に自宅へ退院した時からのお付き合いで、リハビリも含め週3日訪問しています。2年前まで、自宅療養が安定せず、「尿が漏れている」、「お腹を痛がっている」、「浣腸をお願いします、」と、土、日となると昼夜問わず頻回にコールが鳴りました。妻に介護指導をしても、「私ではだめだから、看護師さんでないと」と消極的でしたが、やがてバルントラブルは、定期の膀胱洗浄はせず2週に1回のカテーテル交換で落ち着きました。
排便トラブルは、誘因として腸蠕動が弱く、腸内にガスが貯留しやすいこともあり、試行錯誤しましたが、土曜日は妻がヘルパーと座薬ないしは浣腸できるまでになりました。
当の本人は、自宅では好きなカラオケもできないと妻に当たり、それを妻は間食させては落ち着かせたため、どんどん肥満に拍車がかかってしまいました。当時も今もですが、夫婦の癒しは唯一、飼っている年老いた猫です。また、夕食後に口の中に残渣が多く、口腔ケアをしていないため、年1~2回は、誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しました。
●寝たきり状態の改善に向けて
昨年は寝たきり状態を何とか改善できないかと、「リフトを利用し妻でも車いす移乗を可能にすること」を目的に担当者会議を開き、実行することができました。看護学生の実習では、積極的に受け持ちになってもらいました。午前の訪問看護で妻にリフト操作をしてもらい、車いすに移乗させる、歯科医の紹介の電動歯ブラシを本人に使用させる、さらに口の体操も行いました。昼食後も同様にして、午後のヘルパーの訪問時にベッドに戻るという介護計画としました。
Aさんは、学生たちと会話することで、良い刺激となり、「散歩に行きたい」と言うほど意欲的になりました。学生たちのおかげで、夕食後も電動歯ブラシを使用できるようになりました。夜間も訴えが少なくなり、それで妻も落ち着きました。
●望むサービスをどう提供できるか...
しかし、それも長くは続かず...。
今年3月、口腔内残渣物が見られるようになると、誤嚥性肺炎でK病院に入院、肺炎の治療のみでリハビリがなかったため、本当に寝たきりとなってしまったのです。意識のもうろう状態が続き、食事はキザミからミキサー食、夜間せん妄もあり、午前2時過ぎになると騒ぎ出しました。4月25日に退院しましたが、端座位保持も困難なため、車いす移乗も、もちろんできなくなってしまいました。そして、「看護師さん、お願いしまーす」と、また以前のようにコールが始まりました。
「家に居たい」というAさん、「施設ではお金がかかるから、家で面倒みるしかない」という妻。安心した介護サービスを提供するには、Aさん夫婦が望むサービスをどう提供できるか、早急に担当者会議の検討が迫られています。