野田南部診療所 師長 小林智美
野田市南部に診療所がオープンしたのは1994年、改修工事を経て地域の皆さんの支えもあり現在に至ります。
診療所は主に、外来診察、訪問診療、健診などを行っています。外来患者さんは0歳から90歳代までと幅が広く、毎日赤ちゃんの泣き声や患者さん同士のあいさつ、スタッフとの会話での笑い声などで賑やかに過ぎています。
●地域包括支援センターと連携して
私が異動し早3年、独居・日中独居の高齢患者さんが目に留まるようになりました。患者さんの中には介護保険の申請をしていない方、要支援の方などがいますが、その都度ご家族に申請の仕方などの説明をしています。
また要支援の方で、ADLの低下、生活に支障がある方は地域包括支援センターに情報提供をして、見回りに行ってもらうことを進めてきました。その中で何件かは区分変更がされて要介護となり、訪問看護、社会福祉サービスの導入をしてもらいました。地域包括支援センターは、一緒に地域の患者さんを見守ってもらっている心強い味方です。
●訪問診療で在宅患者を支える
訪問診療では、東葛病院、近隣病院、訪問看護、ケアマネージャーから依頼、紹介を受けます。週3回2名の医師、月70名程の管理をさせてもらっています。
先日、近隣病院から肺がん末期の男性患者さん(70歳代)の相談がありました。抗がん剤治療は終了、緩和治療へ移行。最期は病院で、ベッドが空くまでは在宅で診療をという要望でした。診療所での奥様との面接では、「夫の意志があるので、なるべく沿うようにしたい」というものでした。それで、病状に合わせて診ていくことにしました。
初回訪問では、ご本人は神経質なところが見受けられました。騒音で眠れないということで、住み慣れた2階の寝室のベッドで、酸素投与をしていました。少しの動きでも呼吸が荒く、苦しそうでした。それでも、呼吸が苦しいときに使う薬(レスキュー)を使いません。「薬に頼りたくない」「2階で生活できる」「緩和病棟が空いたらそこに行く」と話されました。
奥様ともご本人の様子を見ながら診て行くことにし、毎週の訪問診療を行いました。訪問すること1ヵ月、意識が薄れていく中、家族の説得もあり、1階にベッドを移し生活の場を変えました。また家族に最期はどこで過ごすかという相談を、訪問看護ナースとも連携し、傾聴してもらい、奥様が「夫も今は判断不可能、ここまできたら自宅でみます」と決断しました。それから夫は、数回の訪問を最後に永眠されました。
●診療所ナースの役割が見えてきた
自宅で看病することは、とても大変なことです。一つひとつが不安です。そばに私たちがいること、訪問看護師ときちんと連携をとっていることを、介護者にきちんと伝え、少しでも役に立つ診療所看護師でいたいと、この方の看取りを援助して学びました。
診療所に異動し、漠然とした診療所ナースのイメージでしたが、少しずつ役割が見えてきました。在宅患者を把握し、外来患者をスタッフとしっかりと診ていきたいと思います。