松戸なのはな訪問看護ステーション所長 三浦 純江
在宅での療養生活には、病状の影響だけでなく、生活環境のいろいろなことがかかわってきます。住宅事情もその一つです。訪問看護でいろいろなお宅を訪問しますが、住宅事情は地域や年代による違いを感じます。何代も前からその土地で生活されているお宅もあれば、密集した住宅地もあります。駅の近くでは、マンションなど集合住宅が多くみられます。
今はバリアフリー化が進んでいますが、段差や間口の狭い家も多いのです。マンションなのにエレベーターがない、もしくは各階に止まらない構造になっているところもあります。
●不便な外階段の昇降がリハビリに
ある利用者さんが暮らすマンションは、1階が駐車場のため住居は2階以上の構造です。1階から2階までは15段ほどの外階段を使わなければなりません。その方は脳梗塞後遺症のため、伝わり歩行をしています。日常的には長い時間椅子に座っており、年齢的にも廃用症候群に陥りやすい状況です。
訪問看護ステーションで週2回の入浴介助と週1回のリハビリをしていることも、日常生活動作を維持できている要因ですが、週3回の通院で階段の昇降をしていることが、一番のリハビリにつながっています。
●さまざまな住宅事情を抱えながら
また、奇数階でしかエレベーターが止まらない別のマンションでは、ひどい腰痛で動けなくなった利用者さんを、受診のために家族とケアマネが3人がかりで抱え移動したこともありました。
密集した住宅地でも、玄関前の段差の高さや、道幅や交通量の関係でスロープも使用できず、外出が困難になるケースもあります。車椅子ごと利用者さんを持ち上げ、玄関先の7~8段の階段を昇降したこともありました。さらに、西日が強い家、反対に日当たりが悪い家などもあります。先日の台風では、マンホールが壊れ、水があふれたため、トイレが使えなくなった家や、あわや浸水という状況が起きたところもありました。
●自分の家で安心して暮らすには
住み慣れた家で生活したいと誰もが願うことですが、安心して安全に療養生活を送ることは容易ではありません。自宅に帰ることで日常生活がリハビリにつながる方もありますが、どんな段取りが必要か、サービスは利用できるのか、見守っていても大丈夫かなど想像力も働かせ、看護につなげていく必要があります。本人をはじめ、多くの方の知恵を出し合い、一緒に考えていきたいと思っています。