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第99回 突然の若年脳炎を発症
~本人らしく過ごすために家族と共に支える看護~

 東葛病院 4東病棟 前田梨絵

 

 4東病棟Bチームは整形外科と内科の混合病棟で、主に手術を受ける患者さんが多いです。今回、重度意識障害を伴う30代の若年脳炎患者さんをチームで初めて受け入れました。

 

●全身性のけいれんを繰り返すAさん

 Aさんは、専業主婦で夫と小さなお子さんとの3人暮らし。

 39度台の発熱があり、当院の救急外来を受診。初診から3日後の深夜、意味不明のことを言いだし、会話が通じなくなって、救急外来を受診。ウイルス感染の疑いで入院となりました。

 入院当日の朝、数分間の全身性強直性けいれんがあり、その後も意識障害が遷延する状態で、人工呼吸器管理となりました。薬物によるけいれんのコントロールが難しく、人工呼吸器を離脱することはできましたが、気管切開、経鼻経管栄養を行い、けいれんを繰り返している状態で、約2ヵ月後にハイケアユニットから4東病棟に転病棟となりました。

 当初は全身性のけいれんを繰り返し、意識障害が残っていました。視線は合わず、目は見えていないようでした。言葉はおうむ返しで、意志の疎通はできませんでした。起き上がろうとしたり、ベッド柵に頭や足をかけたりと、ベッド上での動きが活発で、Mチューブの自己抜去も繰り返し、けいれんの対応も含め、常に目が離せない状況が続いていました。

 

●コーヒーの匂いに反応した!

 Aさんが転科してくるにあたり、私たちはAさんと家族をどう支えていくべきか、うまく支えていけるだろうか、とても不安でした。夫の思いは、「諦めたくない。焦りません。見えること、食べられること、ひとつひとつ回復していってほしい」というものでした。

 私たちは、夫の「ひとつひとつ回復してほしい」という願いを支え続けていくために、まずケースカンファレンスを行い、ご家族との連絡ノートを作成しました。私たちは、ノートに「今日は笑顔が見られました」「スタッフの顔を目で追っていました」など、小さな変化を書き込んでいきました。「今日はコーヒーの匂いに開眼しました」とのリハビリスタッフのコメントに対し、夫は「コーヒーの匂いに反応しましたか! 次回、タオルをいい匂いのする柔軟剤で洗ってきますね」と記入してあり、夫も私たちと同じ思い、同じ方向で、共に歩んできていると感じ嬉しかったです。

●医療チーム一丸となって支え続ける

 このように小さな変化を見逃さず、医師、リハビリスタッフと日常的に情報を交換していきました。ひとつひとつAさんができたことを医療チームで語り合い、確認しては、何が良かったのか評価しました。また、「娘が昨日幼稚園を退園し、今日から保育園に通い始めました。すごく楽しんでいて安心しました」などと家庭の様子まで書き込んでくれた時、ご家族との関係は少しずつ強固な連帯感を築けているのではないかと感じました。

 やがてAさんは、意識レベルにまだ波があるものの、笑顔で自分から受話器を持ち、ご両親に電話するまでに回復しました。転病棟から約4週間という短期間でした。

 医療チームが一丸となって連携し、取り組んだ看護は、夫と共にAさんを支える看護となって、実を結びました。これからも、Aさんへの看護は続きます。

看護NOW